野々宮家の家計を見直してみた
9月も終わり10月になった。
だが、またまたまたまた引き続き、映画『そして父になる』の主人公、野々宮良多さん率いる野々宮家の家計について語ってみたい。
映画『そして父になる』は子供の取り違えをテーマにした父親で主人公の野々宮良多さんの成長の物語である。子供の取り違えという重いテーマを取り扱いながら、商業的な成功も得た作品だ。
しかし、映画を観て僕が何より気になったのは野々宮良多さんの家計についてである。
エリートとはいえサラリーマンでありながら、なかなかのハイグレードな生活ぶりが気になって家計を診断してみようという試みを何回かに分けて記事にしてみた次第である。
ちなみに、前回までの記事を要約すると、
野々宮良多さんは、大手建設会社に勤める管理職(課長)である。
野々宮家の家族構成は、良多さんの他、専業主婦のみどりさん、そして小学生の息子の慶多くん(6歳)である。
良多さんの年収は、ボーナス込みで1325万円であり、年間可処分所得は1031万810円、1ヶ月あたりの可処分所得約86万円である。
野々宮家の出費は月間91万1000円であり、月々5万1000円オーバーとなる。
なんと、野々宮家の支出は収入を超え、破綻してしまっている。そんな状況が明らかになってしまった。
そんなわけで野々宮家の家計を助けるべく、勝手に改善ポイントを挙げてみたいと思う。
これも再録だが、まず野々宮家の支出は以下の通り。
( )内は合計支出に占めるおおよその割合である。
・住居費 50万8000円(56%)
・食費 12万円(13%)
・水道光熱費 4万円(5%)
・教育費 10万円(11%)
・保険料 1万円(1%)
・通信費 3万円(3%)
・車両費 7万3000円(8%)
・その他(日用品など) 3万円(3%)
・合計 91万1000円(100%)
家計の改善ポイントは一目瞭然。住居費である。
一般には家計にしめる住居費の割合は30%以内に抑えるべきと言われているが、現状は56%とあまりにも高い。
家計の改善は言うまでもなくこれを抑えることに尽きる。
野々宮家が暮らすのはコンフォリア新宿イーストタワーだ。
SUUMOの調査によると東京都内における新宿区の家賃相場は、港区、渋谷区、千代田区、中央区に続いて5番目に高い。2LDKで港区が30万円、新宿区が23.2万円だそうだ。
新宿の家賃相場は東京の中でもかなり高めな上に、さらに野々宮家が暮らすコンフォリア新宿イーストサイドタワーは50万8000円(2LDK 14階の場合)と破格である。
これはどうにかしないといけない。
ということで何の変哲もないが対策は住み替えしかないであろう。
良多さんの勤務先は、スーパーゼネコンの大林組をモデルにしたであろう大手建設会社である。
映画では、豪奢なオフィス街のビルに休日出勤しているシーンがあるが、これは大林組の東京本店と推測する。
大林組の本店の所在地は、JR品川駅前の港南エリア付近のため、良多さんは思い切ってその近くに引っ越すのはどうだろうか。
しかし、港南エリアは品川駅前とはいえ、品川区ではなく港区。港区は東京都内でも最も家賃相場の高いエリアではあるが。とにかくSUUMOで調べてみよう。
SUUMOの、JR品川駅、2LDK、15階以上の高層階、築10年以内の築浅物件という設定で調べてみると、まずヒットしたのが、「品川ハート ビュータワー」である。これは、17階で33万1000円(うち、管理費1万5000円)だ。そして住所も港南エリア。
ちなみに駐車場代は3万5000円。
これで17万7000円も家賃が浮いてしまった。格安SIMに替えるとか、せせこましい節約をしなくても、これだけで野々宮家の家計の問題は解決という気もする。薄々わかってはいたけれど。。。
やはりコンフォリア新宿イーストサイドタワーの家賃があまりに破格なのだ(2回目)。
この品川ハートビュータワーへの住み替えは、完全に良多さんの心情を無視した提案ではあるが、コンフォリア新宿に比べ、住環境の面でそう落ちるとは思われない。
そしてみどりさんはどうだろうか。もともと前橋の一般家庭に育った庶民的なみどりさんのこと、そして、そもそもみどりさんは、良多さんのハイソサエティ志向というか、上昇志向にちょっとついていけてないようにさえ見えた。
そんなだから、みどりさんは住み替えに大きな不満はないだろう。
品川ハートビュータワーから良多さんが勤める大林組東京本店までの距離は、なんと500m。徒歩にして約5分である。
まぁ、タワマンはセキュリティが厳しく、建物から出るまでに更に5分はかかるから、実際は、徒歩10分というところか。それにしてもめちゃくちゃ近い。
これは、多忙な良多さんにとっては職住近接で悪くない選択だろう。
家族との時間も多く確保できるということで、映画で描かれた慶多くんに心の距離を感じさせてしまうこともなかったのではないか。これは慶多くんにとってもいいことだ。
ここで見直した家計を以下にまとめてみよう。
住居費と駐車場代を減額すると次のようになる。
・住居費 33万1000円
・食費 12万円
・水道光熱費 4万円
・教育費 10万円
・保険料 1万円
・通信費 3万円
・車両費 6万5000円
・その他(日用品など) 3万円
・合計 72万6000円
可処分所得が86万円だから、手残りが13万4000円となる。
こうなると、ようやく良多さんの小遣いも賄えそうな感じになってくる。
そして、みどりさんも友達とのランチ代なども捻出できそうだ。
良多さんとみどりさんの小遣いを、合わせて仮に10万円としてみよう。
手残りは3万4000円となり、これは将来の貯蓄に回せそうである。
貯蓄3万4000円というと、ちょうどつみたてNISAの月々の積立限度額という感じだから、
エリート高年収サラリーマンとしてはやや寂しいか。
年収1000万円オーバーにも関わらず、いや、だからこそ老後破綻の危険があると言わざるをえない状況だ。
もうちょっとなんとか改善できないだろうか。
ここからは強引に下げてみよう。そもそも元々がかなりじゃぶじゃぶ使う仮定を僕がしているのだから。
まず、食費を12万円から7万円くらいにはできるかもしれない。5万円ダウンはできるだろう。
そして通信費はもうキャリアの通常プランから、AHAMOなどの割安なプランに変えていただこう。これなら通信品質は落とさずに、1万円から3000円ほどにできる。良多さんとみどりさんの2人分だから、これで1万4000円ダウンである。
日用品も3万円から1万円ほど減らして、2万円としよう。
これで7万4000円の減額が可能となる。手残りは10万8000円である。
多少の貯蓄と、急な出費にもなんとか対応できそうだ。
しかし、車の買い替えと慶多くんの今後の進学に伴う出費、そして老後資金をまかなうのはなかなかに厳しそうである。
そして、取り違えられた実の子である琉晴くんを引き取ることはやはり無理なようだ。
いずれにしても映画では、実際に血をわけだ琉晴くんではなく、一緒に過ごした慶多くんと暮らしていくことを決めるのだから、琉晴くんを引き取る必要はない。
良多さん、みどりさん、そして慶多くんの親子3人で幸せに暮らしていってもらいたいものである。
やっぱり苦しい、野々宮さんの家計事情
前回、前々回に続き、映画『そして父になる』の話を続ける。
メインテーマである子供の取り違えでも、父親である福山雅治さん演じる野々宮良多さんの成長の話でもない。やはり野々宮さんの家計の話だ。
大手建設会社に勤めるエリートの年間の可処分所得は1031万810円(年収1325万円)、1ヶ月あたりの可処分所得は、約86万円であった。
前回に続き、支出を洗い出してみたい。
ちなみに前回調べたのは住居費のみで、なんと50万8000円という考えられない家賃だったのである。
【プロフィール】
まずはプロフィールのおさらい。
夫 良多さん 44歳 大手建設会社勤務
妻 みどりさん 30歳 専業主婦
息子 慶多くん 6歳
【費目】
費目としては以下のようになるだろう。前に住居費を求めたので今日は残りの費目について求めていこう。前に調査したのは住居費50万8000円を先に書いておく。
・住居費 50万8000円
・食費
・教育費
・保険料
・通信費
・車両費
・その他
・食費 12万円
理想の家計として食費は手取り収入の15%まで、という教えがあるらしい。86万円の15%というと約12万円。1日あたり、4000円だ。
4000円だと外食というわけにはいかないだろうが、良多さんはそもそも仕事仕事の人生だから、家族で外食するにしてもせいぜい休日だけだろう。
普段の食事はある程度買い置きしているはずだし、みどりさんは失礼ながら完全なる庶民の出なのだから、1日4000円で十分やりくりはできるだろう。
それに慶多くんも6歳とまだ食べ盛りという年齢でもないから十分だと考える。
・水道光熱費 4万円
続いて水道光熱費。これは5%くらいが理想という考えがある。
となると、4万円というところか。
妥当性を明確に示すのは難しいのだが、僕の場合は日中不在にしているとはいえ、休日は殆ど引きこもって1人で1万円もかからないくらいだ。
そのへんから考えると、仮にみどりさんが一日中家にいたとしても、まぁ4万円で十分まかなえるであろう。
・教育費 10万円
慶多くんの学費ということになるのだが、これについてはある程度明確に根拠を示すことができる。なにせ、映画の冒頭が慶多くんの私立小学校の面接からはじまり、そして学校に通うシーンが描かれているのだ。
慶多くんが通う小学校は、というかモデルになっているのは私立さとえ学園小学校というところらしい。エンドロールにもそう出ている。なのでさとえ学園に通っているものとしよう。
早速さとえ学園の学費を調べてみよう。以下のサイトを参考にした。
年間の学費が83万7000円なので1月あたりの学費は約7万円だ。公立小学校の学費が年間32万円で1月あたり2.7万円だからやはりずいぶん高いものだ。
しかも、この年に入学したのでかかっているはずの制服代 23万円、入学費 25万円は除いた額でこれである。
しかし、公立小学校とはもっと差が開いているのかと思いきや、そうでもないのが意外であった。会社員でもそこそこ裕福な家庭であれば十分に選択肢に入ってくるという感じだ。
そして、通学費用と多少のお小遣いとして1万円くらいは必要だろう。
更に、慶多くんはピアノも習っている。ヤマハ音楽教室の学費は7150円だから、約1万円としておこう。
すると教育費は、さとえ学園の学費 7万円+通学費、お小遣い 1万円+ピアノ教室月謝 1万円で、10万円となる。
この費目は今後慶多くんの成長に合わせてどんどんかさんでくるだろうから恐ろしい限りだ。
・保険料 1万円
野々宮家では働いているのが良多さんのみであるから、良多さんに何かあった時の保険は基本的に必要だと思う。
とはいえ、強気の良多さんのこと、保険をかけている可能性は低いが、野々宮家のもしもの時に備えて掛け捨ての生命保険1万円程度に入っていると考えておこう。
・通信費 3万円
野々宮家はタワーマンションの高層階に住んでいる。高層階は電波が入りにくいという話もあるため、格安SIMではなく3大キャリアであると想定する。
これは、良多さん、みどりさんそれぞれで1万円ずつ。そしてその他据え置きの電話があったからその料金、家のネット回線費用として1万円の合計3万円と想定する。
・車両費 7万3000円
良多さんはあのレクサスの所有者である。車種は映画に登場するが、レクサス460というセダンタイプ、新車価格はなんと、770万~1595万円である。
見栄っ張りの良多さんのこと、新車である可能性は高いが、そしてローンが残っている可能性はなお高いが、この際それは完済済みであるとしよう。車の維持費で考えると次のようになる。
・駐車場代 4万3000円
コンフォリア新宿はなんといってもタワマンである。駐車場代も半端ではない。それは4万 3000円はそりゃいくだろう。とはいっても新宿区の場合、そのへんの月極駐車場でも平均は3万5000円くらいはするので大きな差はない。
・ガソリン代 1万円
合計すると7万3000円だ。これもなかなかにでかい。教育費と合わせると20万円近くいくのですが。。。
・その他(日用品など) 3万円
それは日用品も必要だし、みどりさんのランチ代も必要だろう。3万円とみておこう。
この時点でまとめると結局次のようになる。
・住居費 50万8000円
・食費 12万円
・水道光熱費 4万円
・教育費 10万円
・保険料 1万円
・通信費 3万円
・車両費 7万3000円
・その他 3万円
そして、合計すると91万1000円。見事に86万円を超えてしまっている。5万1000円オーバー。
ボーナス込みでこれだから、しかも良多さんのお小遣いもなしでこれなのだから、残念ながら破綻してしまっている。
とはいえ、これだけのタワマンだの、レクサスだの、名門私立小学校だの、という生 活の割に5万円オーバーで済んでいるというのは意外であった。
もっと箸にも棒にもかからない破綻ぶりを予想していたのだが、さすがエリートサラリーマンである。
しかし、これでは慶多くんの他に琉晴くんまで引き取るなんて全く無理な話である。
部長もよく2人とも引き取っちゃえ、など勝手なことをいうものだ。
次は野々宮家の家計改善について考えてみたい。
野々宮さん家の支出をみてみる
映画『そして父になる』を観た。
子供の取り違え、という映画の重いテーマはさておき、僕が気になったのは福山雅治さんが演じる主人公の野々宮良多さんのハイグレードな生活ぶりであることは以前に記事に書いた。
良多さんの勤務先がいかな大手建設会社とはいえ、しがないサラリーマンの身である。
生活が立ち行かないことになっていないか、気になるあまり前回の記事では野々宮家の年間可処分所得を計算してみた。
すると年間の可処分所得は1031万810円(年収1325万円)、1ヶ月あたりの可処分所得は、約86万円であることがわかった。
これを受けて今回は、野々宮家の支出をみていきたい。
果たしてその生活水準は所得に見合うものなのであろうか。一サラリーマンである僕にとっても大いに興味のある内容だ。
【プロフィール】
夫 良多さん 44歳 大手建設会社勤務
妻 みどりさん 30歳 専業主婦
息子 慶多くん 6歳
【費目】
費目としては以下のようになるだろう。
・住居費
・食費
・教育費
・保険料
・通信費
・車両費
・お小遣い
・その他
【内訳】
・住居費
良多さんたちはどこに住んでいるのか。これはエンドロールに明確に示されている。
『コンフォリア新宿イーストサイドタワー(旧パークハビオ新宿イーストサイドタワー)である。泣く子も黙るタワーマンション(通称タワマン)。いいよなぁ。
では早速、間取りをみてみよう。
映画では、妻のみどりさんが普段過ごしているLDKのほか、良多さんの仕事部屋、そして家族の寝室と、2つの個室が確認できた。なので広さは2LDKとしておこう。
慶多くんの子供部屋にともう一部屋存在する可能性があるが、この物件で3LDKはさすがに張り込み過ぎだろう。家賃がとんでもないことになりそうだから、2LDKで考えていこう。
そしてタワーマンションといえば、なんと言っても売りは高層階。
リビングからは新宿とはいえ、眼下に多くの家々がみえた。
これをざっと14階と仮定してコンフォリア新宿の家賃を調べてみると、2LDKで50万8000円!
なんと、驚愕の50万超えである。
良多さんのひと月の可処分所得が86万円なので、家賃だけですでに59%を占めている!
ほんとはもっと高層階の可能性があるのだけど、もう家賃がエラいことになりそうなので14階としておこう。十分に良い眺めだよ、14階でも。
しかし、一般的に「家賃は生活費の30%まで」などともいわれる中、この59%は危険信号なのではないか?
と思うが、残りがまだ35万2000円もある。夫婦、子1人ならば十分に暮らしていけそうな額だ。
そして、今回の計算では、家賃として計上しているが、持ち家の可能性もある。わかりやすいので賃貸の想定とさせていただいたことをご了承いただきたい。
ここまででかなり疲れてしまったので、続きはまた改めて記事にさせていただきたい。
家計にご注意、野々宮さん -映画『そして父になる』への勝手なる考察
映画『そして父になる』を観た。
この作品を観た方は多いと思うが、どんな話かあえて言うならば、出生時に子供を取り違えられた二組の夫婦の葛藤と交流を通した、主人公である父親の成長物語である。
監督は、後に『海街diary』、『三度目の殺人』、そして『万引き家族』なども手掛ける是枝裕和さん。
キャストは、主演を福山雅治さんが務め、他にも尾野真千子さん、リリー・フランキーさん、真木よう子さんなど、個性的、かつ豪華な俳優陣が出演している。
興行収入は30億円超えと大成功を収めたのみならず、評論家の評価も高く、またカンヌ国際映画祭 審査員賞を受賞するほどの栄誉も得ている。あらゆる面で恵まれた作品といえるだろう。
そして、この映画の主題については、国内外を問わず様々なメディアですでに語り尽くされている感がある。
だから、この記事では主題に全く関係のない、僕が印象に残ったところを勝手に考察させていただくことにする。
僕がこの映画で特に印象的に感じるのは、なんといっても福山雅治さん演じる、エリートサラリーマン(かつイケメン)である野々宮良多さんのハイグレードな生活ぶりである。
特に印象に残るのが主人公の金遣いとは、我ながら下世話な話で情けない限りだが、東京、タワーマンション、高級車、そして有名私立小学校のお受験と、大変な勢いである。
同じく子供の取り違い被害にあった、群馬在住、しがない街の電気屋の斎木雄大さん(こちらはリリー・フランキーさんが演じる)と対比して、これでもかと金持ちの生活ぶりが描かれる。
しかし、この生活、ほんとに破綻しない? 大丈夫?
良多さんと同じサラリーマンの立場として、勝手に心配し、勝手に家計を診断させていただこう、これがこの記事の目的である。
記事の構成は、野々宮家の収入、支出、そして、もし家計に改善ポイントがあれば勝手にアドバイス、の3部構成とする。
すべてを1記事にまとめると長くなり過ぎるのでこの記事は野々宮家の収入の話のみに留めさせて下さい。
野々宮家の収入
野々宮家の家族構成
さあ、さっそく野々宮家の収入を見ていこう。
まず、野々宮家は東京都心(それがどこかの考察は支出のコーナーで行う)に居を構え、家族構成は、夫の野々宮良多さん、妻のみどりさん、そして息子の慶多くんの3人だ。
妻のみどりさんは、もともと良多さんと同じ会社の同僚であったが、良多さんとの結婚を機に専業主婦となったため、収入はない。また、慶多くんも6歳になったばかりということで、同じく収入はなし。
つまり、野々宮家にキャッシュフローをもたらしているのは夫の良多さんのみということだ。
勤務先
では、良多さんの勤務先をみていこう。良多さんは、大手建設会社(社名は三㟢(みさき?)建設株式会社という)に勤務するエリートサラリーマンであり、セクションは開発企画といったところであろうか、新宿駅西口の再開発プロジェクトのリーダーを務めている。
映画の冒頭では、再開発プロジェクト受注のため、デベロッパー(?)に向けたプレゼン準備の陣頭指揮をとるシーンが描かれている。
この三㟢建設株式会社は架空の会社であり、現実にはない。だから、収入を推定するために現実の会社にあてはめて考える必要がある。
建設会社で、都市開発のような大規模プロジェクトの設計、施工を請け負うほどの規模であれば、やはりスーパーゼネコン(年間単体売上が1兆円を超える)と考えるのが妥当だろう。
そして、現在スーパーゼネコンは5社存在する。大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、そして竹中工務店だ。
ふと、映画のエンドロールを観てみると、撮影協力に「大林組」の名前がある。どの面で協力をしたのか不明だが、今回は、スーパーゼネコンの中でも最大手クラスである大林組をモデルにして考えていこう。
大林組はあの六本木ヒルズの施工や、大阪のグランフロントの設計、施工をはじめ、都市開発において多くの実績もあることだし、きっと新宿駅西口の再開発プロジェクトも任せるに足ることだろう。(偉そう)
年収
次に良多さんの職制であるが、プロジェクトのリーダーである以外にはっきりと述べられているシーンはない。
しかし、映画には良多さんの直属の上司であろう「部長」という肩書の人が登場するから、良多さんはまだ「部長」ではなく、将来有望な「課長」というところであろうか。
では、大林組の課長の年収はどの程度なのか。これは以下の給料BANKのサイトで調べた。サイトによれば、1325.4万円とのことだ。
https://kyuryobank.com/kensetsu/obayashi.html
ちなみに良多さんは何歳なのか、年齢を推定してみる。作中では年齢が明かされるシーンはなかったが、妻のみどりさんからは、コレステロール値が高く、卵の摂取は控えるよう、注意されていた。
この映画上映時の福山雅治さんの年齢は44歳であるし、健康不安がぼちぼち出てくる年頃であるところからして、良多さんを40代前半と考えるのが、まぁ妥当なところであろう。
そして、給料BANKのサイトのみならず、様々な転職サイトでも大林組の40代前半の平均年収は1000万円程度であるとされているので、出世コースに乗っているであろう良多さんの年収が、1325万円というのは当たらずとも遠からず、といえるだろう。
以上により、良多さんの年収は1325万円とする。
さすがに年収1000万円の壁はクリアしてきた。というよりエリートの設定ならばこれは最低ラインとして超えてほしいところだ。
そして、大林組に副業制度はないようなので、副業収入はないものとする。良多さんは、とにかく多忙で、休日ですら息子の慶多くんと遊ぶ時間も作れないくらいだから、仮に副業制度があったところで副業に充てるまとまった時間を確保するのは難しいかもしれない。
したがって野々宮家に事業所得はないということになる。
その他に考えられそうな所得として、株式などの配当所得はどうだろうか。これは全く情報がない。仮に情報があっても保有している金融商品と保有時価総額まで分からないとどうしようもないので、なしとしておこう。
所得税
ここからは所得を計算していく。
税金を計算して、収入から引く。つまり、手取りはいくらになるのか、というやつだ。
※ここからは延々と税金の計算が続くので、面倒な方は一番下までスクロールして下さい。良多さんの可処分所得が分かります。
良多さんの所得は、数ある所得の中で給与所得のみであるから、まずは、次の3ステップで所得税引き後の所得を計算していくことになる。
1.所得金額(給与所得)を計算する。
はじめに給与所得を計算していく。
まず、税金は収入ではなく所得にかかる。所得とは収入から控除を引くことによって求められるが、この段階で差し引ける控除は次の2つがある。
- 給与所得控除
給与所得控除は、収入に応じて定められた割合まで経費に相当するものを認めようというものである。
所得控除額は収入レンジによって異なるのだが、良多さんの年収1325万円は、収入850万円超という、最上位のレンジが適用され、その給与所得控除額は195万円となる。
つまり、給与所得控除後の所得は、1325万円-195万円=1130万円 だ。
- 所得金額調整控除
続いて、所得金額調整控除である。子育て・介護世帯への負担減のためのものであり、要件は給与収入850万円超で、本人あるいは親族に障害を持っているか、23歳未満の扶養親族がいる場合である。
これが適用されるようになったのは、2020年以降だから映画の上映前だが、野々宮家の家計のために適用していこう。
所得金額調整控除は、1000万円※-850万円×10%=15万円(※最高額は1000万円)
そうなると、良多さんの所得金額調整控除後の所得は、1130万円-15万円=1115万円となる。
2.課税所得の計算
次に、課税所得を求めていこう。
これは上で求めた所得からさらに以下の所得控除を求めて差し引くというプロセスで、上の所得控除と同じ扱いのようだが、少し違う。
課税標準を求めるには、給与所得と、他の所得がある人は他の所得と合算した上で以下の所得控除を行うのだ。だから上とは違うステップとして行わなければならないのだ。
ただし、良多さんは給与所得のみしか所得がないため、ステップを分ける必要はないのだが。
これはまじでめんどくさい。
しかし、無視できないほどに大きなものだ。やらないわけにはいかないだろう。
まず、社会保険料は、4~6月の平均報酬月額の平均から求めた、標準報酬月額に税率を乗じて求められる。
ということで、良多さんの報酬月額を推定してみよう。
年収は1325万円で、賞与は仮に年2回で計4ヶ月分とし、報酬月額をαと置くと、報酬月額は次の通り表される。
α x 12ヶ月 + α x 4ヶ月 = 1325万円
α=1325万円÷16ヶ月=82万8000円となり、標準報酬月額は約83万円だ。
これだと賞与が報酬額に含まれないことになるのだが、年3回以下の賞与は報酬に含まないため、これでよい。(年4回を超えると含まれるようになる。)
続いて、標準報酬月額から社会保険料を求める。
社会保険料には年金保険料、医療保険料、そして介護保険料が含まれる。
早速求めていこう。
- 年金保険料:
年金保険は国民年金と厚生年金に分けられるが、良多さんは会社員なので、厚生年金保険の被保険者だ。
厚生年金保険料の計算式は標準報酬月額に税率 18.3%を掛けた、以下となる。
83万円x18.3%÷2=7万5945円
厚生年金保険料は労使折半で会社が半分負担している。本人負担分を求めるために2で割っていると理解してほしい。
良多さんは会社員なので国民健康保険ではなく、健康保険の対象だ。
健康保険にも中小企業向けの協会けんぽと、主に大企業向けの組合けんぽがあるが、大林組は大企業なので組合けんぽとなるだろう。
と思っていたのだが、大林組はゼネコンを対象にした全国土木建築国民健康保険組合というものに入会しているらしい。
そこで、この全国土木建築国民健康保険組合のサイトのお世話になり、医療保険料、介護保険料の控除額を求めていく。
まず、全国土木建築国民健康保険組合において組合員は、ざっくりと次の2軸で分類される。
後期高齢者か否か(つまり75歳未満か否か)、そして日雇労働者か否かである。
日雇労働者は、第二種組合員に該当し、それ以外は第一種組合員に該当する。
良多さんは当然第一種組合員であり、かつ後期高齢者でもない。
この条件で保険料を求める。
基準となる報酬月額と賞与額のそれぞれにかかってくるのが医療保険料や、介護保険料ということになる。
第一種組合員で報酬月額は83万円、そして44歳の良多さんは40歳以上65歳未満のため、第二号被保険者となる。
その場合の組合員負担分の保険料はサイトの早見表によると、4万250円である。
(労使の完全な折半ではなく、組合員側の負担が20%くらい少ない。)
そして、賞与額に対する医療保険、介護保険料は、サイト内の計算シートで計算した。
結果として組合員負担分は16万1020円であった。
内訳は次の通り。
医療保険料 10万2920円
後期高齢者支援金 2万6560円
介護保険料 3万1540円
社会保険料の計算はここまでで、良多さんが支払っている社会保険料は、7万5945円+16万1020円=23万6965円 と分かった。これは全額控除となる。
- 生命保険料控除:
専業主婦とまだ小さな子供を抱えているのだから掛け捨ての生命保険に入っているものと考えられる。従って最大の4万円の控除が適用できるものとする。
- 医療費控除、地震控除、寄付金控除:これらは推定しにくいのでなしとしておく。
ここまで計算し、ようやく課税所得を求められる。
課税所得は、1115万円 - 基礎控除 48万円 - 社会保険料控除 23万6965円 - 生命保険料控除 4万円 = 1039万3000円(千円未満切り捨て) となる。
3.税額を求める
上で求めた課税所得に税率を乗じて税額を求める。
課税所得 1039万3035円の所得税額の税率は33%で、計算は以下の通り。
所得税額は、1039万3000円 x 33% -153万6000円 = 189万3690円 である。
本来は、ここから更に税額控除を差し引いて実際の税額となる。
税額控除に該当するのが住宅ローン控除とか、配当控除とかいうやつだが、ここでは割愛する。
以上、大変な長旅であった。全国土木建築国民健康保険組合の存在などさすがに知らんかったし。
だがしかし、あくまでここまでは所得税の話。まだ住民税が残っている。。。
もう、だいぶしんどくなってきたがヤケである。住民税についても計算してみよう。
住民税
良多さんのような給与所得者が納税の義務を負う住民税(個人住民税)には所得割と均等割がある。
まずは、所得割についてだが、これは所得税の求め方と同じである。ただ、違う箇所が2箇所。
それは生命保険料控除の限度額が2万8000円であることと、税額が10%であることだ。それ以外の計算方法は所得税と同じ。
これ以上プロセスの解説は不要だろう。
税額は、1040万5000円(千円未満切り捨て)x10%=104万円となる。
そして、均等割分の税額は5500円である。(うち500円は復興特別税で時限装置)
所得割と均等割を合算した104万5500円が良多さんが納める個人住民税の額となる。
可処分所得はいくらか?
ようやく税金の計算が全て終わった。
いよいよ、良多さんの手取り(可処分所得)を計算してみよう。
これが良多さんの年間の可処分所得である。
1ヶ月あたり、約86万円というところか。
まとめ
良多さんは課長である。
良多さんは44歳である。
良多さんの年収は1325万円である。
良多さんの可処分所得は1031万810円である。(1ヶ月あたり約86万円)
手取りは80%弱になっているから、20%以上はお国のために、地域のために働いているということになる。
サラリーマンは税金取られ放題という悲しい現実を改めて目の当たりにしたわけではあるが、意外に残ったなという感じもしている。
次回は野々宮家がどのように使っているのかをみていくことにしよう。
エルサたちはやっぱり寒い?
最近、アマゾン・プライム・ビデオで映画を観た。
フリーアナウンサーであり、女優もやっている田中みな実が主演する『ずっと独身でいるつもり?』である。
この作品は、2021年に上映されたものであり、原作は、2015年に出版されたおかざき真里の同名のコミックである。さらにその原作コミックは、2016年に亡くなられた雨宮まみの同名のエッセイがもとになっている。
結論からいうと、視聴した後に大変にもやもや感の残る作品であった。なぜもやもやするのか。その辺を考えてみたいと思う。
ブログタイトルには『アナ雪~』と書いておきながら、別の映画を取り上げるのは気が引けるが、『アナ雪』にも触れるゆえ、まずは進めていこう。
そして、批判めいた話になるのだが、映像自体はとても洗練されていて娯楽と捉え楽しく観るという点では基準を満たした映画だったのではないかと思う。
まずは簡単にあらすじを述べる。めんどうなので手っ取り早く、映画の公式サイトを引用させてもらおう。
10年前に執筆したエッセイから一躍有名ライターとなった本田まみ(田中みな実)36歳、独身。自立した女性の幸せの勝ちを赤裸々に綴り、読者の支持を得たが、それに継ぐヒット作を書けずにいる。仕事にやりがいを感じながらも目下迷走中のまみは、自分の年齢に対してことあるごとに周囲から「ずっと独身でいるつもり?」と心配されている。一方、まみが出演する配信番組をきっかけに交錯する女性たちーまみの書いたエッセイを支えに自立した生き方を貫く由紀乃(市川実和子)、"なんちゃってイクメン”の夫への小さな不満を抱えながらインスタ主婦を続ける彩佳(徳永えり)、パパ活女子として生計をたてつつも、若さを失うことに怯える美穂(松村沙友理)。それぞれ異なる生きづらさを抱える4人が踏み出した小さな一歩とは?
という感じだ。公式サイトの引用なので当たり前だが、そのままの映画といえるだろう。
あらすじにもあるように、この作品には主要な4人の女性が登場する。主人公のまみ、由紀乃、彩佳、そして美穂だ。
そして、各々の人物を更に掘り下げた形で取り上げると次のようになる。
まみは、ライターとして名声があり人気配信番組にコメンテーターとして出演、三軒茶屋に中古ながらマンションを購入し、商社に勤務するイケメンの年下彼氏がいる。
由紀乃は、どんな仕事をしているのか、作中で明確には描かれないが、まみと同じ三軒茶屋のマンションを購入し住んでいることから、しっかりとしたキャリアを持っている女性と思われる。同年代(少し年下?)と思しき、長年付き合った彼氏と最近別れてしまった。
彩佳は、夫と子供がいるそこそこ裕福そうな(決して貧しそうではない)専業主婦。マイホームをもち、キラキラインスタ主婦として多くのフォロワーの支持を集めている。
美穂は若さと美貌でギャラ飲みやら、パパ活やらで生計を立てている。
上ではかなり恣意的な取り上げ方をしているが、この登場人物いずれにも共通するのは、どの女もなにかを手に入れている女たちであるという点である。
そして何かを手に入れた上で、不安を感じ、不満を表明しているという点である。
彼女らが感じている不安と、表明している不満とは何か。
まみは、最初のヒット作に並ぶヒットに恵まれないこと、周囲からの結婚に対するプレッシャー、彼氏を含めた自らの仕事に対する無理解、女という立場ゆえの抑圧である。
由紀乃は、彼氏と別れてしまった寂しさ、
彩佳は、専業主婦の立場への夫の無理解ぶりと、そんな夫と今後の長い人生をともに送ることの不安、
そして、美穂は若さと美貌という唯一の取り柄を失いつつあることに対する怯え、といったところであろうか。
登場人物たちに思うことは、あなたたちがもっているものは本当に誰の力も借りることなく、自らの力だけで手にしたものなのですか、そして、だれしもが己の努力のみで持ちえることができるものなのですか、ということである。
この映画には、少なくとも自らが持てる者であるがゆえに享受できた幸福とか、快楽について目を向けられず、つまり価値を認められずに逆に自らに足りないものに対する不満と不安ばかりが描かれているように見える。
手に入れる過程でのもちろん努力はあるのだろうし、女性ゆえの苦労もあったのかもしれない。それがないとは言わない。
この映画にもやもやする理由が少しわかった気がする。
この映画の登場人物たちは、基本的に他者に対する感謝や敬意がなく、全てを自らの力で手に入れたのだという全能感をもっている反面、しいたげられているという被害者意識にまみれた自己がむきだしになっている、自己愛の垂れ流しの物語だからである。
他者にコミック版には顕著に地元を見下す表現が出てくる。それはまみが彼氏(コミック版では商社マンではなく、もっと金のないタイプ)を実家の両親に紹介するために里帰りした時のことだ。
仕出し弁当屋さんの弁当を囲みながら、まみは思う。
「この天ぷら、砂の味がする。やっぱり田舎の安い仕出し弁当屋さんはだめだなぁ。」と。
故郷というものを捨てているし、これをごちそうと思っている親世代ばかにしている。
こういった、他者に対する想像力を欠いた視点でのひとり語りが気持ち悪く感じるのだ。
ディズニー映画『アナと雪の女王』で、雪の女王であるエルサが「少しも寒くないわ!」と歌ってから10年。ここに登場する女性たちは10年ほどまえに「少しも寒くないわ!」と宣言したエルサたちである。しかし10年がたち、やはり一人は寒かったとのたまうエルサたちでもある。
映画のラスト近くに専業主婦であるまみの母がこう言う。「結婚しても一人で生きていく覚悟がないとだめ。」と。これは、現代を生きる私たちが心得ておくべき姿勢であると思うが、
こういったことをあえて映画の台詞のなかで取り上げなければならないほど、この意識が世の女性たちには浸透していないのではないかと、感じた。完全に男女が平等に扱われる社会はまだ遠いのかもしれない。
業務効率化オタク、椅子を買う
僕は基本的に「ミニマリスト」気質である。
必要最小限のものに囲まれている状況に無上の喜びを感じるたちだし、
また、「業務効率化オタク」でもある。使いやすく効率のよいシステムを考えることに無上の喜びを感じてしまう。
だから、生活していて「いらないな」と感じたものを捨てることには抵抗がないし、むしろ無駄なものを捨てられたことに喜びを感じてしまう。
「何か1つを手に入れたら、その代わりに手持ちの何か1つを捨てる」、そんな整理収納アドバイザーのアドバイスを聞くまでもなくナチュラルで実践しているのである。
それゆえ、会社でも隣人がしょっちゅう書類の山をひっくりかえしているのをみては、その山を勝手に捨てたくて捨てたくて、震えてしまう。
ほんとにやってしまうと社会不適合者の烙印をおされてしまうのでやらないけど。
ちなみに僕は今、寂しくひとり暮らしをしている。効率化オタクが高じた挙げ句に奥さんを捨てた、などいうわけはなく、僕が捨てられたのである。
しかし、同居人がいないということは誰に気兼ねなく好きに効率化してもよいということである。「せっかく」なのでチューニングした。
最小限のものを残し機能的かつ、おしゃれカフェっぽい雰囲気もある、いい感じの部屋になった。すこぶる快適である。
ただ、その中で解決しないままの問題を一つ放置してしまっていた。それがデスクチェア問題である。
僕は姿勢が悪い。どんな椅子に座っても背もたれをフル活用してしまう人間である。
会社でも、PCのモニタに頭が隠れてしまうほど姿勢を崩して座っているため、同僚に「お前は席にいるか、いないかわからんよ。」などと言われてしまっている。
ちなみに、自宅で使っている椅子は下の写真のようなありさまで、背もたれががっつりと折れて用をなさなくなってしまっている。
おしゃれカフェ風で壁色にも床色にもマッチして、つまり部屋になじみ、よい感じだったのだが、背もたれをフル活用してした挙げ句、半年足らずであっさりと死亡させてしまったのである。
その下が、サイトから引っ張ってきた新品状態の写真。比べてみるとその無惨さがわかるだろう。
僕はデスクワークが主な設計者であるから、やはり折れたままの椅子で仕事をしつづけるのはさすがに無法者である。まともなデスクチェアを求める気持ちは日増しに高まっていった。
ものの、まともなデスクチェアというのは高いのだ、と見聞きしている。10万円は下らないというか20万円近くがボリュームゾーンらしい。
しかし、こんな時期に何の因果か、新型コロナウィルスに罹ってしまい、テレワークを余儀なくされた時に感じた。「この椅子ではだめだ。。。」と。
そこで、意を決して探しにいくことにした。僕は大阪に住んでいるので、そこそこのデスクチェアが一同に揃う場所といえばここである。「IDC大塚家具 大阪南港ショールーム」。
コロナの自宅待機明けの週末に早速、突撃することにした。
僕は大阪市内の北の方に住んでいるから、JR大阪駅から地下鉄御堂筋線、中央線、ニュートラムを乗り継いで一路、トレードセンター前へ。
誰かのブログによると、梅田からシャトルバスが運行しているらしいが、IDC大塚家具のHPにはシャトルバスの情報は1ミリもなかったから、なくなってしまったのかもしれない。
ここで、僕がデスク・チェアを選ぶ基本的な方針について述べる。
- ヘッドレストがある。
今までヘッドレスト付きの椅子を所有したことはないし、会社の椅子にもヘッドレストはないのだが、何かの機会にヘッドレストを試した時に、ふと首を預けるところがあると体への負担が段違いに軽減されることを知った。長時間作業もこれで安心だ。
- ランバーサポートがある。
ランバーサポートをご存知だろうか。背もたれの後ろ、腰の上あたりに当たるウレタン(?)状のサポートである。元々あまり重視していなかったけど、あるのとないのでは背中の安定感がかなり違う。しっかりと体を支えてくれる。長時間作業もこれで安心だ。
- 後傾姿勢で座れる。
前述の通り、僕は姿勢が悪い。骨盤が後傾しているのだろう。後傾姿勢がぎこちなく感じないフォルムの椅子がほしい。
本当は後傾姿勢を治すべきなのだろうけど、いかんせん僕ももう43歳である。あまり無理をせず、自分の体を尊重してもいいのではないだろうか。
- 座面と背もたれの色が白かグレー。フレームの色にはこだわりなし。
これは部屋とのマッチングの問題。日本の賃貸住宅の壁や、床は白っぽい色味が多い。デスク・チェアといえば黒が多いかもしれないが、部屋になじませるには白かグレーがいいだろう。引っ越したとしても引っ越し先になじみそうだし。
フレームの色は黒かシルバーというところだろう。選択肢があまりないだろうからこだわらないことにした。
- オットマンは不要
足を乗せるためのオットマンを使い切れるほど部屋が広くはない。それに休憩する時は椅子を離れて歩くのがよい。オットマンは不要である。
上の条件をふまえて絞り込んだのは以下である。
- バロンチェア(オカムラ/日本)
ヘッドレストがある。割りと当たる位置がいい。
ランバーサポートはオプションで取り付け可。
やや、前傾姿勢
とにかくカラーバリエーションが豊富。白もグレーも当然ある。
約17万円
ヘッドレストがある。
カラーバリエーションが多く、白、グレーもあり。フレームの色も選べ、
最もカラーバリエーションが豊富。
後傾姿勢。
約22万円
- エルゴヒューマン(コンフォートシーティング/台湾)
ヘッドレストがある。当たる位置がやや下かも。
ランバーサポートあり。
後傾姿勢。
カラーバリエーションは豊富だが、ベースが黒の編み上げ地なのでどんな色も
まあまあ黒っぽくなる。
約10万円
- ゾディ(ヘイワース/アメリカ)
ヘッドレストあり。しかも当たる位置がよい。
ランバーサポートあり。
後傾姿勢。
座面、全て黒のみカラーバリエーションはなし(?)
約18万円
なお、この店には他にも様々な高機能オフィスチェアを扱っており、試座することができる。高機能オフィスチェアの代名詞的存在がハーマンミラーの「アーロンチェア」だろうが、試座してみたのだが、明らかな前傾向きで僕には合わなかった。
上のまとめを見てみてどうだろう。
この時点で僕の求める条件を比較的よく満たしていたのはコンテッサセコンダだ。しかし、問題がある。値段が最も高い。予算は条件に挙げていなかったが、いかんせんこの価格差は無視できない。
値段の差を考えると、エルゴヒューマンも捨てがたい。結局この4種類を何度も座り直して試したがなかなか決断がつかなかったのである。
やっぱりコンテッサであろうか。
そんな中、何度目かのエルゴヒューマンを試していた時に店員さんがふと、こう言った。
「隣に置いてあるエルゴヒューマンの"プロ”はいかがですか?ヘッドレストの高さ調整ができるんですよ。」
なんと、エルゴヒューマン"プロ”にすることで、結局全ての条件を満たせたのであった。しかも値段も1万円ほどアップで相変わらず一番安いのも、大変によい。
こうして僕は無事、エルゴヒューマンプロに決め、家に帰ってからAmazonで購入させていただいた。
IDC大塚家具さんには大変申し訳ないが、将来年収2億円くらいの大金持ちになったら家具の一つでも買うということで許してもらおう。
1週間後、エルゴヒューマンプロが届いた。オフィスチェアは結構重い。女性が一人で組み立てるのは、できなくはないが助けがあった方がよいかもしれない。
部屋に置いてみると下のような感じになった。
元々の健康派カフェ感はだいぶ喪失してしまったが、これはこれで部屋に馴染む色味を選んだのでまあ問題はない。慣れれば違和感はまったくない。
そして、結果として、QOLが爆上がりした。当たり前だが、長時間作業が苦にならなくなった。このブログも苦もなく書くことができる。そして1本のブログネタも提供してくれた。
以下にこれまでのまとめを示す。
- やっぱり座ってみないとわからない。
- 僕は選択に後悔はないが、ほんとうは1週間くらい座ってみるのがよいのかもしれない。
- 自分の骨盤の傾きをふまえフォルムにはこだわった方がよい。ここが一番大事かもしれない。
- ヘッドレストとランバーサポートはやっぱりあるとよい。ヘッドレストは高さも大事。
- 値段が高いのがよいとは限らない。少なくとも自分に合うとは限らない。
業務効率化オタクが椅子を買うまでのプロセスを紹介させていただいた。高機能チェアを買う際に参考にしていただければ幸いである。
全世界株式インデックスファンドの投資信託は最近の発明品?
山崎元さんと大橋弘祐さんの著書、『難しいことはよくわかりませんが、お金のふやしかたを教えてください!』を読んで、株式投資を始めた話を前に書いた。
購入した商品は、書いているままにオススメの投資信託『ニッセイ外国株式インデックスファンド(海外株式)』、上場投資信託『上場インデックスファンドTOPIX(国内株式)』である。
購入した額は、この本でオススメされていた、海外と国内株式を50%の額ずつ購入するのがオススメだったので、予算700万円を半々で購入した。
その後のパフォーマンスは、『上場インデックスファンドTOPIX』と『ニッセイ外国株式インデックスファンド』ともに上がり下がりはあれどなかなかに伸びている。
特に米国株が大半を占める『ニッセイ外国~』は、コロナ禍に際してGAFAMを筆頭にしたハイパーグロース株の株価の爆上げの影響で、大いに資産拡大に貢献してくれたものである。
資産が増えているのだから特段に不満はないのだが、そして購入決めたのは僕自身の選択の結果なのだから不満をもつのも筋違いなのだけど、最近になってふと思った。
まず、『ニッセイ外国株式インデックスファンド』は、ニッセイアセットマネジメントが運営している、先進国23カ国の株式を指標化した数字「MSCIコクサイインデックス」に連動したインデックスファンドである。
一方、『上場インデックスファンドTOPIX』は、日興アセットマネジメントが運営している、TOPIXに連動したインデックスファンドである。
投資対象は、先進国23カ国と日本である。だから、いずれのファンドも、先進国のみに投資し、新興国は含まれいないことになる。
投資の原則的な教えとして「長期、分散、積立」という旨があって山崎さんもそのように進めておられるのだが、その割に先進国のウェイトが大きすぎやしないかと。
そして、山崎さんの最近の著書『ほったらかし投資術 全面改訂 第3版』を読むとオススメの投資信託が『eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)』を推奨している。
三菱UFJ国際投信が運営し、株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動したインデックスファンドである。
このファンドの国・地域別の構成比率は、日本を含む先進国に88.9%、新興国に11.1%である。
この比率は時価総額加重平均にもとづいて設定したものだろうが、”オール・カントリー”の文字通り、全世界を投資対象としている。
先進国のみならず、新興国を含み、1本のファンドで全世界への投資を可能とする、合理的な選択であろうと思う。
しかし、オススメが変わっているのはなぜだろうか。宗旨替えをしたわけではないだろう。
ここで『eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)』を含む、全世界株式のインデックスファンドについて少し調べてみる。
ちなみに、全世界株式のインデックスファンドにはどのようなものがあるのか。「みんかぶ」の【インデックス型】投資信託人気ランキングをみてみる。
ランキング人気上位の全世界株式インデックスファンドをピックアップすると以下の通り。(あくまで人気ランキングであり、パフォーマンスのランキングではない。)
『ほったらかし投資術 全面改訂 第3版』がオススメしている、『eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)』はインデックス型の投資信託の中で堂々の2位につけている。
- 2位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
- 13位 eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)
- 20位 楽天全世界株式インデックス・ファンド
- 28位 SBI全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま(全世界株式))
- 59位 SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド(SBI・V・全世界株式)
なお、第1位は『eMAXIS Slim米国株式(S&P500)』である。第3位が『SBI・V・S&P500インデックス・ファンド』、第4位が『楽天・全米株式インデックス・ファンド』とやはり米国株が強い。
近年の米国株ブームを鑑みるに、納得のランキングである。
なお、『ニッセイ外国株式インデックスファンド』は、22位となかなかに健闘している。
ついでもう少し深く、ランキング上位の全世界株式インデックスファンド、それぞれの設定日と特色を以下にまとめてみる。
- 2位 eMaxisSlim全世界株式(オール・カントリー)
設定日:2018年10月31日
特色:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざす。
- 13位 eMaxixSlim全世界株式(除く日本)
設定日:2018年3月19日
特色:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
(除く、日本、配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざす。
- 20位 楽天全世界株式インデックス・ファンド
設定日:2017年9月29日
特色:「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF」、
「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF」、
「バンガード・トータル・インターナショナル・ストックETF」を
主要投資対象とし、日本を含む全世界の株式市場の動きに連動する
投資成果をめざす。
- 28位 SBI全世界株式インデックス・ファンド(雪だるま(全世界株式))
設定日:2017年12月6日
特色:グローバル株式インデックスマザーファンド受益証券を
主要投資対象とし、全世界の株式市場の値動きに連動する
投資成果をめざす。
- 59位 SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド(SBI・V・全世界株式)
設定日:2022年1月31日
特色:日本を含む全世界の株式市場の値動きに連動する投資成果をめざし、
FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに連動するETFに
投資する。
こうして眺めてみると、特色についてはファンドによって違いはあれど、どれも全世界の株式市場の値動きに連動する投資成果をめざしている。そして設定日は、古い(歴史が長い)のが2017年12月6日なので、どれもこれもここ5年くらいに設定されたものばかりである。
なお、『ニッセイ外国株式インデックスファンド』の設定日は、2013年12月10日、『上場インデックスファンドTOPIX』の設定日は、2001年12月20日、山崎さんの『難しいことはよくわかりませんが、~』が書かれたのは 2015年11月17日なので、この本が書かれた頃は現在、山崎さんがオススメするような全世界株式インデックスファンドはなかったようだ。
そして、僕が株式投資をはじめたのは2017年4月20日のことだから、まだ世に出るまえのことである。
全世界株式のインデックスファンドの投資信託というのは、すべからく最近の発明であったのだとわかる。
上場投資信託である、ETFはもっと昔から存在していたが、投資信託タイプのものがなかったのは意外であった。
これはなぜであろうか。勝手に想像をもてあそんでみると、基本的に全世界株式というのは、山崎さんの言うように多くの人にとって最適解といえる投資先であると思う。
そして、2018年1月から「つみたてNISA」制度が開始されている。
多くの人のとって最適解の一つである全世界株式は、このつみたてNISAにはぴったりだ。制度がはじまるつみたてNISAに向けて、運用会社はこぞってファンドを開発したという背景もあるのかもしれない。