株式投資のトビラをあけて

株式投資をはじめてかれこれ6年ちょっとになるだろうか、現在43歳。

 僕の流派は、長期投資、分散、積立を前提とした王道のインデックス投資派だから、はじめて6年というのはまだまだ始めたばかりというところだ。やはり15年、いやせめて10年くらいは続けないとなかなか年季が入ってきたとはいえないだろう、界隈ででかい顔もできないだろう(別にする気もないけど)と思いながら続けている。

 まだやめずに続けているいうことは、少なからず今のところ期待とメリットを感じられているからであり、これまでの、別に面白くもない、そして何かを成し遂げた人生というわけでもないけれど、これぐらいはなんとか続けていきたいものである。

 そもそも僕が株式投資というものを始めたきっかけは、勤めている会社で確定拠出年金制度が開始されるということにさかのぼる。ある日会社の大食堂に集められ、メインバンクであるみずほ銀行が開催する説明会を受けたのである。しかし、みずほて。。。

 銘柄選定方法などはわからないのと、「株はギャンブル」の猜疑心が強かったため(今思えば根拠なき全く無知ゆえだったといえるのだけれど)、そして制度の利用を強制されることへの反発もあって、それゆえ、とりあえず、全て銀行の定期預金を選ぼうとしたのだが(ちなみに、全て銀行の定期預金を選択すると元本割れはないのだが、これまでの確定給付年金の受給額に対し、制度上明らかに負け、である。。。)、ちょっとした気の迷いで思い直し(決して何かひらめきがあったわけではない)それでも中身を理解せず、適当な銘柄をいくつか選んではじめてみたというのが最初である。周りの人間をみても似たような感じだったと思う。

 その後の値動きなども全く気にすることはなかった。その時に何の銘柄を選んでいたかも今やすっかり忘れてしまった。

 そんなある日、なにげなく立ち寄ったコンビニの書籍コーナーで目に止まったのが、インデックス投資界隈ではいわば教祖的な存在でもある(ご本人にそのつもりはまったくないだろうが)山崎元さんと、大橋弘祐さんの共著、『難しいことはわかりませんが、お金のふやしかたを教えてください!』である。この本には大いに影響を受けることになったのである。

 あえて取り上げる恥ずかしいくらいに有名になった本だし、ここまでストレートな欲求をタイトルにした本を、カッコつけの(恥ずかしがり屋の)僕が取り上げるのもだいぶ恥ずかしいのだけど、まあ、いい。過去の自分を認め、受け入れられない生き方の方がもっとかっこ悪く、恥ずかしいことだろうから。変わるのだ、いつからでも。今日からでも。

 この本を手にとったきっかけを思い返してみるに、当時ローンチしてそれほど間もなかったであろう、ニュースピックスの僕がユーザであったことが挙げられると思う。

 ニュースピックスは経済に特化したニュースサイト、メディアで、ニュースを有識者の解説、コメントとともに読めるのが特徴のちょっと「意識高い」メディアである。ちょっと高級なヤフコメと揶揄されることもあるけれど、

 先に冒頭にあげたニュースを解説、コメントする有識者である、プロピッカーを務めておられた一人が山崎元さんである。

 山崎さんのコメントは、論理的で的確なのは言うまでもなく、かつ語る他者の視座に対する想像力もありながら、そこに寄り過ぎず一貫して俯瞰した立場からぶれずにいるという立ち位置の安定感と、ちょっと皮肉とユーモアもある。

 落語などでなんとなくおかしみがあることを「ふらがある」というが、真面目な語り口の中にもちょっとふらがあるのが山崎さんの魅力であろう。

 そんなこんなで、コメントには注目しており、この人の言うことは結構信用できそうだ、という、いわゆる「いい印象」をもっていたのである。

 そうでなければさすがにこの欲望丸出しどストレートタイトルの本は買わなかっただろうと思う。ニュースピックスの思わぬところが、僕の投資という新しい活動のきっかけになったのだ。スティーブ・ジョブズの言葉を借りるならば、なかなか「コネクティング・ザ・ドッツ」味を感じるできごとである。

 同著で推奨されているのは長期、分散、積立を旨とした王道のインデックス投資というものであり、今でこそ投資系のインフルエンサーやYouTuberらがさかんに喧伝しており、また昨今のコロナ禍を契機とした、米国のFRBが主導して行った、金融緩和による米国のハイパーグロース株を中心とした株価の暴騰により、広く知られるようになった感を感じるのだけど、2017年初頭はまだまだ世間の投資への意識は比べものにならないくらい低い頃ではなかったかと思う。

 仮想通貨ブームも仮想通貨という言葉すら市民権を得ていない、というか一般的な時代ではなかったし。

 いずれにしても僕はこの本を読んで、本に書かれた投資法を忠実に実行し、その後多少のアレンジを加えながらもインデックス投資家として今に至ることになる。

 次はその歴史を(勝手に)振り返ってみたいと思う。