時代の声

 ラジオが好きだ。

 モノとしてのラジオではなく、もちろん番組を聴くことが好きなのだけど。

 どのくらい好きかといえば、例えるなら、ハクション大魔王にとってのハンバーグくらいのものである。。。

 なんというか、少なくとも、週末、土曜日と日曜日は朝から晩までラジオをかけて過ごしているというくらいには僕はラジオというメディアを支持している。

 特に最近の好みは、FM大阪で土曜日の16時からリリー・フランキーさんがパーソナリティを務める『スナックラジオ』、そして同じくFM大阪で日曜日の15時からオンエアされている『日本郵便 SUNDAY'S POST』。こちらのパーソナリティは、小山薫堂さん、そして宇賀なつみさん。

 『スナックラジオ』はリリー・フランキーさんがアシスタントをいじりながら繰り広げる、ちょっぴりエロくて軽妙なトークが土曜日の夕方という黄昏の時間帯にぴったりだ。

 そして、『SUNDAY'S POST』は、手紙をテーマにしているだけあって、リスナーさんからのお手紙に心暖まるのだが、何よりこの番組の魅力を支えるのは、宇賀なつみさんの声である。とてもいい。

 やや低音で、包まれるような安心感、だけでなくしっかりかわいらしさもあって声だけで好きになってしまう。ずるいな、と思う。宇賀さんの声が聴きたくてこの番組を聴いているといっても過言ではない、かもしれない。

 いつか、はがき職人をやってみようとも思うのだが、そして宇賀なつみさんにラブレターを書いて、番組で読まれて、んで、彼女の反応をみてみたい(聴いてみたい)、などと妄想するのだが、ラジオを相手にしてさえ、ひっこみ思案な性格が災いしてか一向に叶わぬ。

 そんな中で今日題材にするのは、土曜日の17時からオンエア中の、お笑いコンビ、麒麟川島明さんがパーソナリティを務める『SUBARU Wonderful Journey 土曜日のエウレカ』だ。これもFM大阪

 この番組は自動車メーカーがスポンサーなだけあって、個性的なゲスト(本当にゲストのセレクトは個性的だと思う)と一緒にドライブしながらあれこれ語り合うという設定のトーク番組であり、くどいようだがホントにゲストは個性的である。

 同番組の2022年8月6日のゲストは、あの東京スカパラダイスオーケストラバリトンサックスのパートを務める谷中敦さん。しぶい(しぶすぎる)声、二人の共演である。

 ここからが本題。東京スカパラダイスオーケストラは、あのYOASOBIの幾田りらさんを擁して新曲『Free Free Free feat. 幾田りら』をリリースして間もない頃で宣伝の目的も大いにあったのだろう。

 番組で、新曲について聞かれた谷中さんは、ボーカルを務めた幾田りらさんの歌声をして、「時代の声」である、と言っていた。

 その何気ない「時代の声」という短いフレーズでの評価が、誠に正鵠を射ていて面白いなと思えたので、ここで僕が考える、これまでの「時代の声」を取り上げてみる。

 条件として、幾田りらさんの声に着想を得た記事であるから、対象は女性アーティストとする。また、取り扱う年代は1980年代以降とさせていただく。1970年代は生まれていないのでよくわかりません。

 以降に示すのが、僕の考えるそれぞれの年代の「時代の声」だ。多分に僕の好みも含まれているけれどもお許しいただきたい。主観、偏見込みの意見こそが面白いと思うので。

 とはいうものの、「いかにも」な、予想しやすい結果になってしまった。

 

1980年代 松田聖子さん

 今なお「最強のアイドル」とされる松田聖子さんを挙げたい。中森明菜さんも捨てがたいが、バブル前夜の高揚感のある時代にしては陰に過ぎる。いまなお伝説として語り継がれる松田聖子さんの声こそ、時代の声にふさわしい、と思う。

 

1990年代 坂井泉水さん(ZARD)、安室奈美恵さん

 この年代からは2名挙げさせていただいた。

 坂井泉水さんは1990年代前半、『負けないで』、『揺れる想い』などのヒット曲で知られる。バブル崩壊後の暗い世相の中で、また男女雇用機会均等法が施行され、社会進出が進んだ女性達に向けて等身大で応援歌を歌い続けた坂井泉水さんのみずみずしい歌声は、やはり「あの時代」だからこそ人々の心に刺さったのだろう。

 1990年代後半は、安室奈美恵さん。一世を風靡した小室ファミリー全盛期の最大のヒットメーカーだ。『Can you Celebrate?』で壮大な結婚の歌を歌ったかと思えばほんとにSAMと結婚して伝説になった。驚いた。

 

2000年代 浜崎あゆみさん、宇多田ヒカルさん

 この年代からも2名だ。浜崎あゆみさんと、宇多田ヒカルさん。

 21世紀になり外資系なんて言葉も流行り始めた頃、日本人離れしたリズム感でJ POPに革命を起こした(セールスもすごい)宇多田ヒカルさんは、グローバルな時代の象徴的な存在と言えるだろう。

 一方、浜崎あゆみさんは、バブル崩壊後の失われた20年、一向に先の見えない時代に自らの暗い半生をのせた抒情的な歌声で爆発的な人気を得た。「時代の寵児」としてもてはやされるほどに孤独の影が強くなっていく、そんな人であった。

 甲乙はつけがたいが、どちらかといえば浜崎あゆみさんの方が「時代の声」というイメージが強い。

 

2010年代 該当なし

 この時代はまさにAKB48グループの全盛であり、ヒットチャートの右をみても左をみてもAKB48の楽曲が占めておる。「時代の声」は「AKB48」としてもよいのだが、やはり個性に乏しく該当なし、とさせていただいた。

 

2020年代 幾田りらさん

 この企画のきっかけとなった人であり、特に異論の余地はなし。

 

 とまあ、こんな感じで谷中さんのふとした一言をきっかけにこんな雑文をものして遊んでしまった。しかし、「時代の声」たる声の持ち主は、やはり単なるヒットメーカーという枠に収まらない。何かしら、その時代背景を反映しているというか、その時代と密着した雰囲気というものを宿しているものだ、と感じる。

 それが何であるか、決して言葉で説明しきれるものではないが、細胞やら神経に訴えかけてくるようなこれぞ「時代の象徴」感がある。これからも色んな人が出てくるだろうが、「時代の声」といった観点で楽曲に触れてみるのも面白いと思う。

 やっぱり、僕にとっては宇賀なつみさんの声が「時代の声」かなぁ。